「デザインが気に入らないから払わない」は通るのか?Web制作「品質・仕様」トラブルの裁判例3選

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「イメージしていたものと違う」「バグが多い」「使いにくい」 これらはWeb制作現場で最も多いクレームです。しかし、いざ裁判になると、発注者(あなた)の「当たり前」が通用しないことが多々あります。

今回は、典型的な「品質・仕様」トラブルの裁判例を3つ紹介し、**「どこまでが業者の責任で、どこからが発注者の責任か」**という境界線を法務視点で解説します。


【事例1】「デザインがダサい」事件(主観的評価の壁)

事件の概要

発注者A社は、制作会社B社にコーポレートサイトの制作を依頼。しかし、提出されたデザイン案に対し、A社は「センスがない」「もっとインパクトが欲しい」と繰り返し修正を要求。 最終的に「これでは使えない」として契約解除と着手金の返還を求めましたが、B社は「やるべき作業は行った」として残金の支払いを求めて提訴しました。

裁判所の判断:【制作会社(業者)の勝ち】

裁判所は、**「デザインの良し悪しは個人の主観によるものであり、客観的な品質基準を決めるのは困難」**と判断しました。 ウェブサイトとしての機能(リンクが飛ぶ、表示される等)に問題がなく、契約で定められた工程をこなしている以上、単に「発注者が気に入らない」という理由での支払拒否は認められませんでした。

弁護士の「自衛」ポイント

  • 「形容詞」で発注しない: 「かっこいい」「おしゃれ」は禁句です。
  • リファレンス(参考)サイトの提示: 具体的なURLを提示し、「このサイトのこの部分の雰囲気に近づけて」と指示することで、主観のズレを「客観的な指示」に変換できます。

【事例2】「機能が足りない」事件(仕様書の落とし穴)

事件の概要

発注者C社は、ECサイトの構築を依頼。「Amazonのようなサイトを作ってほしい」と伝え、業者はそれに基づき開発を行いました。 しかし納品直前になり、C社が「レコメンド機能(おすすめ商品表示)がない」「ポイント機能がない」とクレーム。「Amazonのような」と言ったのだから当然含まれているはずだと主張しましたが、業者は「仕様書に書いていないから別料金だ」と反論し、泥沼化しました。

裁判所の判断:【ケースバイケースだが、業者有利が多い】

裁判所は原則として**「契約書(仕様書・見積書)に記載されていること」**を制作範囲とみなします。 「Amazonのような」という指示はあまりに抽象的であり、仕様書に機能として明記されていない以上、業者がそれを作る義務はないと判断される可能性が高いです。

弁護士の「自衛」ポイント

  • 「言った言わない」をなくす: 口頭での要望は必ず議事録やメールに残してください。
  • 「やらないこと」リストの確認: 見積もりの備考欄にある「○○機能は対象外」という記述を見落とさないでください。逆に、絶対に欲しい機能は「必須要件」として契約書に盛り込む必要があります。

【事例3】「協力しない発注者」事件(協力義務違反)

事件の概要

発注者D社はシステム開発を依頼しましたが、社内が忙しく、業者からの「画面レイアウトの確認依頼」や「商品データの提供依頼」を数ヶ月放置しました。 納期が遅れた挙句、D社は「納期遅延だ」として損害賠償を請求。対する業者は「D社が資料を出さないから進められなかった」と主張しました。

裁判所の判断:【制作会社(業者)の勝ち】

システム開発やWeb制作は、発注者の協力なしには完成しません。これを法的には**「協力義務」**と言います。 裁判所は、D社が必要な情報提供や確認を怠ったことが遅延の原因であるとして、D社の請求を棄却し、逆に業者への未払い報酬の支払いを命じました。

弁護士の「自衛」ポイント

  • Web制作は「丸投げ」できない: 発注者にも「素材提供」「確認」「承認」というタスク(義務)があることを認識してください。
  • ボールを持っているのは誰か: スケジュール遅延が起きた際、「自社の確認待ち」になっていないか常にチェックしましょう。

まとめ:裁判所は「契約書」しか見ない

3つの事例に共通するのは、**「裁判所は『かわいそうな発注者』ではなく、『契約書』を信じる」**という事実です。

「プロなんだから言わなくてもわかってよ(察してよ)」は、ビジネスの現場、特に法的な争いの場では通用しません。 だからこそ、最初の契約段階で**「何を作り、何を作らないのか」「どんな基準で合格とするのか(検収基準)」**を明確にすることが、あなた自身を守る唯一の方法なのです。

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