【弁護士解説】Web制作で起きる「4大トラブル」と解決策。その要求、法的に通る?通らない?
なぜWeb制作は揉めるのか?
「イメージと違う」「追加料金を請求された」「納期に間に合わない」……。 Web制作のトラブルは、実はパターンが決まっています。そしてその根本原因の9割は、**「契約内容の曖昧さ」と「Web独自の商習慣への無理解」**にあります。
ここでは、私が実際の現場で何度も目撃してきたトラブルを4つの類型に分類し、法的な視点(どちらに理があるか)と、今日からできる回避策を解説します。
1. 「品質・仕様」のトラブル
~「思っていたのと違う」は通用するか?~
【よくある相談】
「出来上がったデザインがダサい。何度修正しても良くならないので、契約を解除してお金を返してほしい」 「スマホで見るとレイアウトが崩れているが、直すなら追加料金だと言われた」
【弁護士の視点】
法的には**「契約不適合(旧:瑕疵)」に当たるかが争点です。 しかし、「ダサい」「イメージと違う」という主観的な理由**での修正強要や契約解除は、原則として認められません。契約書や仕様書に明記された機能(スマホ対応など)が実装されていない場合は、業者の責任(債務不履行)を問える可能性が高いです。
- 発注者の理: 明らかなバグ、仕様書に書かれた機能の欠落。
- 業者の理: 「かっこいいデザイン」などの主観的評価、仕様書にない機能の要求。
【回避策】
- 契約前に「デザインの参考サイト」を提示し、具体的なイメージを共有する。
- 「対応ブラウザ・デバイス(iPhone, Chrome等)」を仕様書に明記させる。
「イメージと違うから払わない」は通用する?Web制作で頻発する「品質・仕様」のトラブル。実は、単なる「気に入らない」では支払いを拒めないケースが大半です。本記事では、実際の裁判例を3つ挙げ、法的な「品質」の基準を解説。発注者の「協力義務」とは?仕様書の落とし穴とは?泥沼の紛争を避けるための必須知識を、現役IT弁護士が伝授します。【詳細は下の記事をご覧ください】
2. 「お金」のトラブル
~見積もりに含まれていると思っていたのに~
【よくある相談】
「ちょっとした文言修正をお願いしただけなのに、数万円の追加費用を請求された」 「サーバー代やドメイン代が別料金だなんて聞いていない」
【弁護士の視点】
Web制作の契約(請負契約)は、**「当初定めた仕様のものを完成させること」**への対価です。 したがって、当初の仕様にない作業(たとえテキスト1行の変更でも)は、法的には「追加発注」となり、業者は追加費用を請求する権利があります。
- 発注者の理: 当初の要件定義に含まれていたはずの作業の漏れ。
- 業者の理: 発注者の都合による「仕様変更」。
【回避策】
- 見積書の備考欄を必ず確認する(「〇〇は別途」の記載を見逃さない)。
- 「修正回数は2回まで無料」など、修正ルールの規定を契約書に入れる。
「追加費用なんて聞いていない」「途中解約だから全額返して」Web制作の現場で頻発する金銭トラブル。しかし裁判になると、発注者の言い分が通らないケースも多々あります。本記事では「お金」に関する泥沼裁判例を3つ紹介。見積もりの落とし穴や、契約書なしで発注するリスクとは?現役IT弁護士が、不当な請求から身を守り、無駄な出費を回避するための「自衛策」を徹底解説します。【詳細は下の記事をご覧ください】
3. 「納期・連絡」のトラブル
~ローンチ日に間に合わない!~
【よくある相談】
「制作会社から連絡が来なくなり、納期を過ぎてもサイトが完成しない」 「逆に、『発注者からの素材提供が遅れたから納期も遅れる』と言われた」
【弁護士の視点】
納期遅延による損害賠償請求は可能ですが、**「なぜ遅れたか」**が重要です。 もし、発注者側(あなた)の写真や原稿の提出が遅れていた場合、業者の責任を問うことは難しくなります(協力義務違反)。一方で、業者が理由なく音信不通になった場合は、債務不履行として解除や賠償請求が可能です。
- 発注者の理: 業者の怠慢、能力不足による遅延。
- 業者の理: 発注者の確認遅れ、素材提供の遅れ。
【回避策】
- スケジュール表を作成し、お互いのタスク期限(素材提出日など)を明確にする。
- 契約書に「納期遅延の場合の損害金」条項を設ける。
4. 「権利・引き継ぎ」のトラブル
~そのサイト、実はあなたのものじゃない?~
【よくある相談】
「保守契約を打ち切りたいと言ったら、『サイトのデータは渡せない』と言われた」 「納品されたサイトの画像が、他サイトからの無断転用で著作権侵害だと訴えられた」
【弁護士の視点】
ここが最大の落とし穴です。 著作権法上、制作物の著作権は**「作った人(制作会社)」に発生します。契約書で「著作権を譲渡する」**と明記していない限り、発注者はお金を払っても著作権を持てません。そのため、データを自由に使ったり、他社へ修正を依頼したりできなくなるリスクがあります。
- 発注者の理: お金を払ったのだから自分のものだ(という思い込み)。
- 業者の理: 著作権は譲渡していない。利用許諾を与えているだけ。
【回避策】
- 必ず契約書で「著作権の帰属」を確認する。(「検収完了時に甲(発注者)に移転する」という文言が必要)
- 画像素材等の権利処理(ライセンス購入など)が適切に行われているか確認する。
まとめ:トラブルを防ぐ「最強の武器」とは
これらのトラブルを見ると、いかに**「契約書」と「事前の取り決め」**が重要かお分かりいただけると思います。
口約束だけで進めるのは、命綱なしで崖を登るようなものです。 しかし、すべての発注者が法律に詳しいわけではありません。だからこそ、**「ちゃんとした契約書を用意している制作会社」や「リスクを事前に説明してくれる業者」**を選ぶことが、最初にして最大の自衛策なのです。


